🎄Open UI Advent Calendar: Day 25 / Epilogue

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OpenUI Advent Calendar エピローグ

Table of Contents

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はじめに

ここまで、Open UI の発足背景から、Web の歴史的背景事情によって Form Controls が抱えてきた課題、その課題を象徴する<select>改善の提案背景から、CSE の技術的挑戦とその現状、最後には Global Design System について解説してきました。

最終日の今日は、これまでの記事を踏まえて、Open UI の活動が、Web にどんなインパクトを与えていきそうか、筆者なりに考察してみます。

The Past, Present, and Future of Web UI beyond Form Controls

このアドベントカレンダーを始めるにあたり、Web、特に Form Controls がどうして長年に渡って課題を抱えてきたのか、どうして Web プラットフォームは Form Controls を変えるタイミングを失い続けてきたのかの歴史を振り返りました。

今でこそ、多くの標準化団体や、Interop や Baseline といったプラットフォームが牽引する素晴らしい取り組み、Test262 や WPT などの互換性を測る様々なテストスイートが存在し、私たちは Web をユーザとしても開発者としても、より安心して活用できるようになりました。

しかし、Web の黎明期はそうではありませんでした。ブラウザ戦争、OS に依存したコントロール、健全でない標準、前に進もうとしても突き当たる後方互換性の問題。こうした、Form Controls ひいては Web の進化を阻害してきた過去に盲目になっていては、今プラットフォームが取り組んでいることが自分の中で当たり前になってしまう。そう思って、今回のアドベントカレンダーでは、Form Controls の辿ってきた歴史から丁寧に振り返りました。

たったひとつの HTML 要素にすぎない<select>でさえも、歴史的背景から、見た目やスタイルできる範囲が実に多様で、カスタマイズ可能にするには仕様が足りなさすぎて、複雑かつ莫大な量の仕様検討が必要です。

今回、20/25 日を<select>という Web の小さなパーツにフォーカスして書きましたが、UA からの Light DOM 変更や、新しい擬似要素や擬似クラス、Content Model の変更、Popover API、Anchor Positioning など、非常に多くの関連仕様が絡み合っていて、調べるに足りない部分がまだまだありました。

CSE は割とアクティブに議論されている方ですが、提案から約 4 年が経過した現在でも、まだ完全な仕様策定・実装には至っていません。そんな複雑な議論を要する課題を持った仕様が、Web の世界にはまだまだたくさんあるんだろうな、と思います。

しかし、現代の Web プラットフォームには、こうした課題に取り組むための基盤が整っているし、これらの活動が相互に関係しあって、相乗効果を発揮していくと思います。Global Design System をアドベントカレンダーの締めくくりに取り上げたのは、GDS がその未来の代表例になると、筆者自身が期待しているからです。

GDS というイチ個人のアイデアが、Open UI を巻き込み、Web Components CG や Design Tokens CG などの動きを加速させ、各所で長年難航していた議論を前に進める新たな原動力になるかもしれません。

「Web を良くしたい」という同じ理想を持った人々が、それぞれの立場から、スキルを持ち寄って、主張し、議論し、それが集結して作られた Web が、「ブラウザ」となって私たちの手元に届く。こうしたシナジーの連鎖に、とてもワクワクさせられます。


会期中では、書ききれなかったことの方が多いですが、このアドベントカレンダーを通じて、少しでも得られるものがあったのであれば幸いです。

今後はアドベントカレンダーとはまた形を変えて、Open UI の動向を追っていければと思います。

saku

謝辞

本アドベントカレンダーの執筆にあたり、貴重な時間を割いてレビューを重ねていただいた@Jxckさんに、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。