🎄はじめに
Customizable Select Element Ep.3では、Form Controlが抱える課題と、Customizable Select Element提案の契機となったサーベイを紹介しました。
※以降、CSE = Customizable Select Elementとします。
Open UIでの初期提案
筆者の観測範囲では、Open UI内でCSEに関する最初の提案は以下によって行われました。
<select>
のスタイルしにくさ
まず、現状の問題点の整理をしておきます。
<select>
と一口に言っても、いろいろな種類の<select>
(またはその部品)があって、具体的には以下のように分類できます。
<select>
: 単一選択のbutton<select multiple>
: 複数選択のbutton<select size="n">
: n個の選択肢が表示されるbutton<option>
:<select>
のドロップダウン<optgroup>
:<option>
をグループ化する要素<datalist>
:<option>
をグループ化する要素。<input type="text" list="datalist-id">
で使用してComboboxを作るのによく使われる
<input type="text" list="datalist-id">
:<datalist>
を組み合わせたComboboxのテキストフィールド
基本的に上記のような<select>
(またはその部品)は、標準的なレンダリング方法が確立していないことから、クロスブラウザ・プラットフォームで見た目が一貫していなかったり、スタイルが難しかったりします。
例えば、<select>
のbuttonに関しては、具体的に以下のような制約があります:
- そもそもネイティブの見た目が一貫していない問題
各ブラウザは、<select>
を独自の方法でレンダリングするため、<select>
をそのまま使用すると、ブラウザごとに見た目が異なる
- スタイリングのされ方が一貫していない問題
ブラウザ間でのスタイルの差分を埋めようとしたり、角丸や枠線つきのアレンジされた<select>
を実現しようとしたりすると、ブラウザごとにスタイルのされ方が異なる
- モバイルでの特殊な制約
iOS Safariでは、<select>
のフォントサイズが16px未満だとページがズームインされてしまうという、デバイス固有の特殊な制約がある
- 十分な多言語対応がされていない問題
ネイティブの<select>
は、右から左に書く言語(アラビア語、ヘブライ語など)をサポートしているが、独自のスタイリングをする場合は追加で考慮が必要
などの制約があり、これらを解決しようとクロスブラウザ互換でカスタマイズされた見た目の<select>
のbuttonを作ろうとなると、以下のようなCSSが必要になります。
これらが<select>
のbutton部分のスタイリングに関する制約です。
これはまだいい方で、<select multiple>
や、<option>
などのドロップダウン要素となると、あるプラットフォームではスタイルされるが、別のプラットフォームではスタイルされないといった現象も発生します。
出典: Stylability of Form Controls
これに関しては、Mason Freedが詳細をまとめてくれているので、参考にしてみてください。
Domenic DenicolaによるCSEの初期提案
これらの詳細な調査結果を受けて、GoogleのDomenicは、<select>
のスタイリングに関する問題を解決するためのインクリメンタルなアプローチを切り出しました。
彼の主張をまとめると、以下のようになります。
1. CSSプロパティの拡張
<select>
/<option>
/<optgroup>
に適用可能なCSSプロパティのリストを作成- padding, margin, background-image など、より広範囲のスタイリングを可能にする
- クロスブラウザでの一貫性を確保するため、これらのスタイルのブラウザ間での合意と標準化を目指す
2. <datalist>
と<select>
の統一
<input>
+<datalist>
(Combobox)の見た目と機能を<select>
に近づける- 開発者が両者を「わずかな違いのある同じForm Control」として認識できるようにする
3. 小さく絞って拡張していく
::dropdown-button
や::marker
のような、ドロップダウンの矢印を指定できる疑似要素の追加<select>
のプレースホルダーをplaceholder=""
などとして、スタイル可能なより柔軟なサポートを追加- ドロップダウンが「openな状態」を示す疑似クラスの追加
- モバイルとデスクトップで、ポップアップ表示かドロップダウン表示か区別する擬似クラス的な仕組みを追加
4. UXの改善
- 主にタイピング検索におけるUX改善を提案している
- 現状の
<input>
+<datalist>
でも、確かにタイピング検索ができるが、<datalist>
が必ずしも絞り込みのデータソースではない。<input>
には<datalist>
中の値以外も入力できる
- 現状の
<input type=text list=somedatalist constrained>
のような、制約付きのComboboxを提案
新規要素との比較検討
基本的には既存の<select>
や<input>
+ <datalist>
を拡張していくアプローチを主張していますが、<superselect>
という完全な新規要素作成との比較検討もしています。
インクリメンタルアプローチの利点:
- 段階的な改善が可能
- 既存のコードとの互換性を維持できる
新規要素アプローチの利点:
- 現状酷似したパターンを提供する
<select>
や<input>
+<datalist>
に囚われることなく、<superselect>
という単一の要素だけ学習すれば良くなる - より高度な機能の導入が容易
- サーバー駆動の自動補完やオプション内での任意のHTML表示など
GregやMasonによる一連の調査が、Domenicによる<select>
の問題提起を導き、これを契機にOpen UIで本格的に<select>
のリサーチがなされていくことになります。